「働き方改革」の1つとして挙げられる、社員間やチーム内でのコミュニケーション環境の改善。コラボレーションツールが数多く登場する一方で、基本的な連絡手段である固定電話や内線の世界でも、構内交換機(PBX)をクラウドPBXにリプレースしスマホを内線化させる動きが進む。
とはいえ「日本国内でPBXのクラウド化が顕著になってきたのはここ2~3年のこと」というのが実際のところだという(NTTコミュニケーションズ ボイス&コミュニケーションサービス部 UCaaS&Conferencing PT)。
欧米諸国と比べて導入が進まない背景には、国内では従来型PBXベンダーのプレゼンスが依然として高いことがある。海外では、米アバイア・インクが一時チャプター11(連邦倒産法第11章)を申請するなど、PBXベンダーの統合や撤退が起きており、結果的に移行を後押ししている。国内ではベンダーによる手厚いフォローが続いており、継続的に使われる傾向が強いという。
しかし、データの部分でクラウドの利用が一般化したことで、音声基盤のクラウド化にもスポットライトが当たるようになってきたそうだ。
クラウド化により、音声に限らず、チャットやビデオ会議、アプリ間通話、ファイル共有・閲覧など、企業や社員の間で行われるコミュニケーション機能も盛り込まれるようになった。これらソリューションは、企業向けクラウド型コミュニケーションツールと呼ばれている。ベンダーによっては、クラウド型コラボレーション、ユニファイドコミュニケーション(UC)、クラウドテレフォニーなど様々な表現が使われている。
具体的なソリューションとしては、マイクロソフト「Skype for Business」、シスコシステムズ「Cisco Spark」、Dialpad Japan「Dialpad」、Slack Technologies「Slack」などが挙げられる。ワークスモバイルジャパン「LINE WORKS」も広い意味ではこのカテゴリに該当するだろう。
多くの商品が出ているだけに、通信キャリア側の取扱い状況もまちまちだ。先月行われた「Skype for Business」のセミナー(関連記事)で携帯3キャリアが登壇したように、複数のキャリアが同じ商品を取り扱うケースの他、日本国内でソフトバンクが独占的な提供を行う「Dialpad」のような場合もある。
NTTコミュニケーションズの「Arcstar UCaaS」では、PBX機能を備えた「Cisco HCS」と「Cisco Spark」を連携させ、内線・外線など従来型コミュニケーションと、新たなコミュニケーションの両方が利用可能となっている。
一方、PBXのクラウド化に焦点を絞ったソリューションも数多く登場している。この場合、NTT東日本・NTT西日本「ひかりクラウドPBX」やNTTコミュニケーションズ「Arcstar Smart PBX」のように各通信キャリアもサービスを提供しているが、PBXの設置に携わる電気通信工事会社なども商品を取り扱っている。
それぞれ重きを置く機能や特徴に差があるので、導入目的にあったものを選ぶ必要があると言えるだろう。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて4月13日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |