総務省は4月6日、携帯電話用の周波数割当について1.7GHz帯を楽天とKDDI・沖縄セルラーに40MHz幅(20MHz×2/FDD-LTE)、3.4GHz帯は、NTTドコモとソフトバンクに40MHz幅(TD-LTE)をそれぞれ割り当てる決定を発表した。
今回は、周波数割当の結果から意外だったトピックスについて取り上げてみたい。
予想されていたとは言え、改めて注目されたのは楽天の新規参入が認められことであろう。同社(楽天モバイルネットワーク)は2019年10月にサービスを開始する予定となっており、2023年度の単年度黒字化、2028年度末までに約1000万契約を計画している。
そして、関係者の間で議論となっている設備投資に関しては、2025年までに金融機関の借り入れなどで最大約6000億円の資金調達を計画する。基地局は約2万7000局。既に東京電力や関西電力、中部電力、九州電力の鉄塔や電柱を借りて基地局を設置する契約を締結し、またトラフィックが集中する都市部に関しては、オフィスビルなどの高層建築物に小型基地局を設置していくとしている。
楽天の設備投資額が、NTTドコモの1年分の設備投資額とほぼ同じということで、総務省サイドも不安になったのか、認定の条件として以下の4つを課した。
- 他の既存事業者のネットワークを利用する場合においても、携帯電話事業者は自らネットワークを構築して事業展開を図るという原則に留意すること。
- 特定基地局の円滑かつ確実な整備のため、基地局の設置場所の確保及び工事業者との協力体制の構築に一層努めること。
- 特定基地局その他電気通信設備の適切な運用のため、無線従事者など必要な技術要員を確実に確保、配置すること。
- 競争に伴う経営環境の変化が生じた場合においても、設備投資及び安定的なサービス提供のために必要となる資金の確保その他財務の健全性に留意すること。
我が国ではゼロからインフラを構築して、これまで成功したケース(新規参入事業者)がないだけに、こうした条件付与が後々、楽天の事業運営の選択肢を狭まることになりやしないか疑問も沸く。
今回の周波数割り当てで、もう一つ目を引いたのが、NTTドコモが東名阪以外の1.7GHz帯について申し込みをしなかった点である。
都市部のトラフィック対策強化のため、東名阪以外の1.7GHz帯ではなく、3.4GHz帯獲得を優先したという見方もできるが、他社と同じ周波数帯幅に合わせることで、今後の5G向け周波数獲得戦略をイーブンで進められるようにしたというとらえ方もできるのではないだろうか。
いずれにしても、今更、東名阪以外の1.7GHz帯を他社が欲しいと手を挙げる可能性は低く、今回NTTドコモは投資効率を優先させたということなのかも知れない。
電波割り当ての行司役である総務省は、新規プレイヤーの参入により市場の健全化を促し、有限資産である電波の効率的な利用観点から、広くあまねくユニバーサルサービスの実現を目指しているはずで、その点から今回の決定と齟齬はなかったのか気になるところである。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて4月20日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |