LINEモバイルは7月2日、ソフトバンク網を用いたMVNOサービスを開始した。あわせて「格安スマホ最速チャレンジ」を宣言、ソフトバンク網のMVNOにおいて通信速度が1Mbpsを下回った場合はデータ容量をプレゼントするキャンペーンの展開を打ち出した。
LINEモバイルが通信速度の最低ラインを謳う差別化策に踏み込んだのは、MVNOが通信速度の確保面で課題を抱えている現状の裏返しとも言える。
実際、6月28日に総務省が開催した「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合(第5回)」(以下、第5回会合)では、消費生活センター等に寄せられた苦情を分析した結果が報告されたが、通信速度に関する苦情の割合はMNO(通信キャリア)の3倍以上だったという。
そこで現在進められている取り組みが「実効速度の開示」だ。
実効速度といえば、既に通信キャリア3社は2015年度から公表をはじめる一方、MVNO側では具現化していない。
取り組みが遅れている背景には、MVNO特有の事情が関係している。MVNOは通信キャリアのインフラを借りて事業展開しており、通信キャリア側の状況にも実効速度が左右されてしまう恐れがある。また、総務省のガイドラインでは全国約1500地点で測定することを求めており、MVNOの事業規模を考えると実現へのハードルは極めて高い。
対策として、テレコムサービス協会 MVNO委員会では、MVNO固有の事情を踏まえた実効速度の測定方法の検討が行われてきた。既に実証実験も行っており、MVNO委員会が第5回会合に提出した資料には、実測データから導き出されたMVNOの特性も掲げられた。
これら特性を踏まえ、「屋内で測定する場合は全国任意の1カ所」「10分間隔で24時間連続計測を5回」「MNOの速度を100とした時のMVNOの速度を相対値として折れ線グラフで表示」といった具体的な測定・開示方法が策定され、既にMVNOとMNO間でほぼ合意に至っているという。
資料では、MVNOの実効速度の表示イメージとして折れ線グラフも掲示された。実証実験をもとに作られたものだが、MNOの速度を100としたときのMVNOの速度をオレンジ色の折れ線で示しており、時間帯によって速度が変化していることが一目で分かるようになっている。実際に開示がはじまれば、消費者が自らのニーズにあったサービスを選ぶ参考に大きく寄与しそうだ。
- 総務省が第5回会合に提出した資料
「苦情相談の傾向分析の結果について」 - テレコムサービス協会 MVNO委員会が第5回会合に提出した資料
「MVNOの実効速度計測、広告表示および『MVNOサービスの利用を考えている方へのご注意とアドバイス』の改定」
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて7月6日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |