10月から11月にかけて発表された通信キャリア3社の2018年第2四半期(7~9月期)決算をもとに、今回から3社の主要数値の動きを比較していきたい。初回は解約率について取り上げたい。
3社揃って、2016年度以降で最低水準にまで改善した解約率
上のグラフは、各社の解約率を取りまとめたものである。
公表数値から、スマートフォンや従来型携帯電話に限った解約率(グラフの実線)を比較すると、2018年度第2四半期における各社の解約率は、NTTドコモが0.42%(前年同期比0.05ポイント減)、KDDIが0.64%(同0.15ポイント減)、ソフトバンクが0.71%(同0.03ポイント減)となり、3社ともに数値が改善した。
7~9月期は例年解約率が低くなっており、今年も同様の傾向があらわれた。一方、過去を遡ってみると、今回の3社の数字はいずれも2016年度以降で最低を記録したことも分かった。
新たな料金プランやサブブランドによる他社流出阻止などの施策が功を奏した格好と言えるだろう。
また、顧客囲い込みの武器であるネット回線契約が順調に増加していることも追い風といえる。3社のブロードバンド回線数は9月末時点で1700万契約を突破した。この1年間で200万以上の増加を記録している。
ブロードバンド回線とのセット割が適用されている携帯回線数は、KDDIが1400万(「auスマートバリュー」適用数)、ソフトバンクが882万(「おうち割 光セット」適用数)に達している。
解約が少なくなったことで、通信キャリアからの乗り換えを成長の原動力としてきたMVNOには逆風になっている。NTTドコモが来年度に通信料金の大幅値下げに踏み切ると既に公表したこともあり、MVNOは当面厳しい戦いを余儀なくされそうだ。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて12月10日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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