総務省は2018年12月28日に「移動通信分野におけるインフラシェアリングに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)を策定・公表した。
今年から本格化する5Gエリア展開において、都心部では基地局が設置可能な物理的スペースの確保が課題になっている。一方で、ルーラルエリアに対しては総務省指針の要件に全国展開確保が明記されたが、採算性の問題を抱える。
そのような背景から打ち出されたのがインフラシェアリングだ。具体的には鉄塔や建物などの「工作物」、空中線や基地局装置などの「電気通信設備」の共用を通じて、5Gネットワークの円滑な整備を狙っている。
総務省はガイドラインとあわせ、ガイドライン案に対する意見募集結果も公表した。各者はどのような意見を表明したか、取りまとめた。
ガイドラインでは「電気通信設備の共用、又は卸電気通信役務の提供について特定の事業者に不当な差別的取り扱いを行った場合は業務改善命令の対象になる」という電気通信事業法を根拠に「共用申込があった際、合理的な理由がない限り拒否できない」としている。
この点に意見を申し立てたのがNTTドコモだ。電気通信事業法では「不当な差別的取り扱い」が行われ、かつ「公共の利益が著しく阻害されるおそれがあるとき」が業務改善命令の対象とされているが、後段がガイドラインから漏れており条文の趣旨とは異なるのではないかと指摘した。
NTT東西のシェアリング事業参入を見越して意見申し立てを行ったのがKDDIとソフトバンクの2社だ。
両社とも、NTT東西が参入する場合に「光アクセス回線と工作物・電気通信設備を一体で貸し出す」と想定、その際は現状のコロケーションルールと同等のルール適用が必要と指摘した。シェアしやすいルール整備を求めたと言える。
最後に、鹿児島県の意見を取り上げたい。
鹿児島県は、ガイドラインの目的に「不採算地域ではシェアリングを積極的に活用することが求められる」との文言を追記すべきと意見表明を行った。
その裏には、ルーラルエリアはネットワーク整備が後回しになっているとの現状認識がある。「これまでの携帯電話網に関しては、採算のとれない地方ではその整備がなかなか進まず、地方公共団体が国の補助金等の制度を使い整備を行ってきた」「電気通信事業者はトータルでは儲けているのに、採算がとれないとの理由で地方の設備投資を敬遠してきた」と、かなり手厳しい文言も書かれている。
菅官房長官からの度重なる値下げ要請や総務省が進める「端末と通信料金の分離」の影響で、携帯キャリアの収益モデルは大きな曲がり角を迎えている。通信収入が伸び悩む中で利益を確保するため、従前以上にコスト削減へと踏み込むと考えられる。
5G時代の到来を前に、これまで消極的だった基地局シェアリングにどの程度舵を切ってくるのか、そういう観点からも今後の動向が注目される。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて1月11日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |