先日の日経新聞の一面に、2015年に7位だった日本の固定回線の通信速度が2018年には28位に落ち込んでしまったとの記事が掲載された。
オリンピックを来年に控え、今年は5Gのプレサービスがはじまるなど、無線技術は大きな変革期を迎える。周知の通り、携帯基地局から端末までの無線区間がいくら高速化されても、それ以外の固定回線部分が遅ければ、5Gの恩恵を享受することはできない。
固定回線の高速化を巡る動きはどうなっているか。実は、NTT東西をはじめとする固定通信キャリアでは、無線技術の高速・大容量化へ対応するため、従来10Gbpsだった伝送路を40Gbpsや一部では100Gbpsへ増強を図っているところだ。
では固定通信キャリアの回線増強へ向けたインセンティブが高いかというと、全般的にはそうでもないだろう。弊社では、定期的に通信キャリアの設備投資のトレンドを調査しているが、全般的には微減傾向である。
NTT東西は2015年2月より 光回線の卸売サービス(サービス卸)の提供を開始している。それまで自社で一定のコストを投資して光回線の販売を行っていたが、契約者が思うように伸びず、NTTドコモやソフトバンクなど他社に販売してもらい、自らを回線卸に転換した。その結果、他社へのサービス卸契約比率は、総務省による「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ」によれば57.5%(2018年9月時点)まで上昇している。
契約者数の伸びが鈍化し、通信キャリアの市場における存在感が以前より小さくなるなか、投資インセンティブはどのように担保されていくのだろうか。スマホアプリの大きな流れは既に動画サービスへギアチェンジしており、通信トラフィックが5G離陸で更に急増することは目に見えている。『負担の公平性』という観点から、どのように市場を整備していくべきか、議論すべき時期に来ているかも知れない。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて3月11日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |