
通信キャリア3社が公表した2018年度通期決算をもとに、主要数値を比較する本特集。2回目は、契約あたり収入の動きを整理する。
売上を契約数で割って算出される「1契約あたり収入」は、NTTドコモとソフトバンクがARPU(1契約回線あたり収入)、KDDIがARPA(1契約者あたり収入)の数字を開示している。2018年度第4四半期は、KDDIが前年同期比170円増の6580円、NTTドコモが同50円増の4770円、ソフトバンクが同80円増の4390円で、3社揃って増加している。
KDDIは17年に導入した「auピタットプラン」などの普及により、このところ通信ARPA(グラフ点線)が前年同期比で減少傾向にあったが、第4四半期はその影響が一巡したことを受け、プラスに転換した。
残る2社の状況はどうだろうか。ここで「割引ARPU」の動きに着目してみたい。
割引ARPUとは、毎月どの程度の端末購入補助や光回線セット割引を行っているか、1回線あたりの数値として開示されているものである。具体的には、NTTドコモは「月々サポート」「docomo with」「ドコモ光セット割」、ソフトバンクは「月月割ARPU」や「おうち割 光セット」などの割引額をもとに計算されている(KDDIは非開示のため未掲載)。
グラフを見ると、ソフトバンクの割引ARPUは2018年度第2四半期の1120円から第4四半期の930円へ、半期で190円も急減していることが分かる。ソフトバンクが分離プランである「ウルトラギガモンスター+」等の提供を開始したのは2018年9月からで、両者のタイミングは符合している。「月月割」が非適用の分離プランの導入で、着実に値引き額を圧縮している状況がうかがえる。
さらに言えば、分離プランは通信料引き下げ圧力をもたらすものだが、トータルとしてのARPUは堅調に推移している。光回線契約の拡大、大容量プランへのシフトなどの上積みとともに、端末値引きの圧縮と分離プランによる値下げ幅をうまく相殺させてコントロールをとっていると言えるだろう。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて6月3日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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