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通信キャリアが他社回線を借りてMVNOを展開、その是非を考える

通信キャリアは、他キャリアの回線を借りてMVNOを展開してもよいのか――。MVNOである楽天モバイルが第4の通信キャリアとして参入することで、通信キャリアとMVNOの関係を再検証する時期を迎えたと言える。現状を整理してみよう。

既に全キャリアが「ドコモ網」を利用中

上の図は、通信キャリアのグループ企業が展開する代表的なMVNOが、どのキャリアから回線を借りているか、整理したものである。

KDDIは、100%子会社のビッグローブが展開する「BIGLOBEモバイル」で、KDDI網とあわせてNTTドコモ網によるサービスを提供している。また、連結子会社でIoT通信プラットフォームを提供するソラコムの「SORACOM Air for セルラー」で足回りの部分に用いられているのは、KDDI網とNTTドコモ網となっている。

18年4月にソフトバンクが51%を出資し子会社化したLINEモバイルは、3キャリア全ての回線を使ってMVNOを展開している。楽天モバイルはNTTドコモ網とKDDI網を借りてMVNOサービスを行っている。

このように、各社とも何らかの形でNTTドコモ網を借りたMVNOサービスを展開している状況になっている。

他社回線を借りることの是非、その論点は

ビッグローブ、ソラコム、LINEモバイルの3社は、いずれもKDDIないしソフトバンクが出資する前からNTTドコモ網を借りたMVNOを行っていた「過去の経緯」は、出資から1年以上経た現時点でも新規加入を続けていることを踏まえれば、あまり考慮すべき性質のものではないはずだ。付け加えれば、LINEモバイルがKDDI網を借りたサービスをはじめたのは、ソフトバンク子会社化後の今年4月である。

各社の通信エリアは、人口カバー率ではほぼ100%の水準にあるものの、面積カバー率でみれば3割程度はエリア外のままだ(総務省 電波利用状況調査より)。安易に他社回線を借りてもよくなれば、コストのかかるエリア整備を避ける傾向が高まりかねないだろう。

その一方で、通信キャリアは一定の利潤を確保した上でMVNOに回線を貸しており、問題視すべきではないという意見もある。

果たして、国民の共有財産といえる貴重な電波を割り当てられている通信キャリアが、連結子会社とはいえ他社の電波を借りてサービスすることは許容されるのだろうか。

そもそも、通信キャリアによる寡占市場に風穴を開けるべく後押しされたMVNOという事業形態に、通信キャリアが参入して高いシェアを持ってよいのかという競争政策上の根源的な問題もたなざらしとなったままだ。

10月には楽天モバイルが自社網での携帯事業を開始する予定となっている。自社のMVNOユーザーに対しては、10月以降の自社回線への移行をアナウンスしているが、当面は自社網とMVNOが併存することとなる。

これまで述べてきたように、NTTドコモ以外の各社は自社網と他社網の併存状態が発生している。この状況は問題ないものなのか、あるいは経過的措置として一定期間だけ許容されるものなのか。総務省の判断が待たれるところだ。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて6月14日に公開された記事となります。
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