通信キャリア3社の2019年4~6月期決算をもとに主要数値を比較する短期連載。その最後となる今回は、スマホ等販売数に焦点を当てる。
上のグラフは、各社が公表する「販売数」のうち、スマートフォンなどを中心とした数値の前年同期比増減の状況をまとめたものである。
NTTドコモのスマートフォン販売数は309.5万台(前年同期比21.3万台増)、ソフトバンクの販売数(主要回線)は252.9万件(同4.2万件増)、KDDIのスマートフォン販売台数は165.0万台(同4.0万台増)だった。2018年度の3Qと4Qは減少に転じたキャリアも見受けられたが、今期は3社揃ってプラスを確保している。
特に大きな伸びを記録したのがNTTドコモで、4~6月期(第1四半期)のスマートフォン販売数が300万台を超えたのは2015年以降ではじめてである(これまでは200万台の後半で推移)。その背景の1つが、新料金プランの導入である。NTTドコモが「docomo with」の新規受付を終了する直前の5月、駆け込み需要が発生したことが貢献したとみられる。
実際、携帯電話の大手販売代理店であるコネクシオの決算資料によれば、5月の販売台数が急増した一方、分離プランがスタートした6月には急減するなど、大きな変動があったという。
料金プランによってここまで需要に変動が生じたことを考慮すると、端末値引きに規制が入る今秋以降、特に高価格帯の端末を中心に需要が減少する可能性も現実味を帯びてくる。
通信キャリア各社は何らかの手当てを講ずる構えを見せているものの、打てる手は限られそうだ。一例として、法人顧客向けでは定着している「端末のレンタル提供」を個人向けにも解禁する方策が考えられる。しかしこれは、通信料金や端末代金の値引きを規制するいわゆる1号禁止行為の法律で「販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為)」が対象と記載されていることから、規制対象とみるのが自然だろう。
これでは、いよいよスタートする5Gに対応した端末の普及ペースもゆるやかなものにとどまらざるを得ないだろう。新技術の垂直立ち上げを狙って、5G対応端末だけは規制の対象から外して普及を後押しするといった、大胆な施策に踏み込んでもよいのではないだろうか。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて8月28日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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