一部報道を皮切りに突如議題化した、MVNO向け音声通話回線利用料の引き下げ議論。そこで今回は携帯電話における「音声通話」の状況を取り上げる。
まずは、10月17日午前の記者会見で菅官房長官がどのような発言をしたのか、改めてまとめてみたい。
【菅官房長官 発言要旨】
- 携帯電話は公共の電波を利用して提供されるものだが、諸外国と比較しても高いという指摘がある
- 3社で約9割の寡占状態が長年にわたって続いている中で、料金の引き下げについてこれまで発言してきた
- 格安携帯電話会社が大手携帯電話会社に支払う回線利用料は、データは過去5年間で半額程度に低下しているが、音声については全く低下していない
- 音声に関する回線利用料の在り方について「総務省の審議会においてその適正性を検証する仕組みの導入を検討している」と聞いている
- 政府の役割は、事業者間で競争がしっかりと行われる環境を整備することだと考えている
- 利用者にとって納得できる料金で使用できる環境を作っていきたい
このように、菅官房長官は報道内容を大筋で認め、総務省の審議会が音声通話回線利用料にメスを入れる方向であることを明らかにした。
「音声通話」は通話回数・通話時間ともに減少トレンド
では、音声通話はどの程度利用されているのだろうか。
上のグラフは、総務省が毎年公表している「通信量からみた我が国の音声通信利用状況」から、移動系(携帯電話・PHS)発信の通話データを取りまとめたものである。グラフの通り、この6年間で発信回数は2割以上、通信時間も約1割減少していることが分かった。
通信時間は、基本料金に音声通話定額を標準付与した料金プランを主要各社が2014年春から導入したことで一時的に下げ止まりの傾向を示したものの、直近の2017年度には再び減少に転じた。
今年10月以降の主要各社の新料金プランは、音声通話定額を基本料金から外してオプションでの提供に切り替えたり、通話定額付きとそうでないプランを両方提供したりと、音声通話を力点から外す動きが目立っている。
ニーズの減少が顕著となる中でのMVNO向け音声通話回線利用料の引き下げは、事業者間競争にどのような役割をもたらすのだろうか、今後の議論を見守りたい。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて10月21日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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