携帯キャリア3社の2019年度第2四半期決算から、主要数値を比較する本特集。最後は「契約あたり収入」の動きを取りまとめてみたい。
まず、NTTドコモとソフトバンクの動きを見ていこう。両社は、売上を契約回線数で割って算出されるARPUを開示しており、NTTドコモが前年同期比80円減の4740円、ソフトバンクが同120円増の4450円だった。
通信料金の値下げ圧力が各社に降りかかる中で、明暗が分かれた要因はどこにあるのだろうか。
NTTドコモのARPUが減少傾向なのは、算出に用いる収入を通信関連に限定しており、新料金プランによる値下げ影響をもろに受けやすい点が挙げられる。同社のARPUは、モバイルの基本料や通話料、通信料からなる「モバイルARPU」と「ドコモ光ARPU」から構成されており、コンテンツや決済など付帯サービスの収入は含まれていない。
一方、ソフトバンクのARPUには、端末保証サービス、広告、コンテンツ関連の収入が含まれており、通信収入を補うことができる図式となっている。
あわせて、割引の圧縮もソフトバンクのARPU下支えに貢献している。
回線あたり割引額を示す「割引ARPU」は、ソフトバンクが前年同期比380円減の740円まで減少した。端末割賦契約期間の長期化による影響もあるとはいえ、NTTドコモが前年同期比横ばいの950円だったのとは対照的だ。
残るKDDIは前年同期比320円増の7770円だった。4000円台の他社と大きくかけ離れているのは、唯一同社が売上を契約者数で割って算出するARPAを開示しているからだ。
さらに、2019年度から算出基準を変更し、これまでの「au通信」「付加価値」だけでなく「auでんき」「補償」の収入も含めたことで、金額が上振れしている。
もともと、通信収入の推移を見るための指標として用いられてきたが、同社のARPA数値は通信以外の領域も幅広く含めたものへと変容しており、他社とは異なる数値と捉えた方がよさそうだ。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて12月5日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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