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「経済圏」作りに奔走する通信キャリア各社、EC分野を軸に今年を振り返る

2019年も残すところ数日ほどとなった。あらためて今年を振り返ると、楽天の携帯事業参入をにらみ、通信キャリア各社が自社の「経済圏」作りに奔走した1年だったのではないだろうか。4グループともにサービスを提供し激しい顧客獲得競争を繰り広げているQRコード決済サービスなどは、その好例だろう。様々な分野で合従連衡が行われているが、今回は新規参入した楽天の祖業で、大きな動きのあったEC分野を軸に今年の動きを振り返りたい。

矢継ぎ早に施策を打ったソフトバンク、次の焦点はNTTドコモとKDDIの動向?

上の図は、通信キャリア各グループの主なEC事業を整理したものである。図に示した通り、運営が自社か子会社かは別にして、各グループともにECサイトの運営を手掛けている。

特にファッション通販分野では、9月12日にヤフー(現Zホールディングス)がZOZOの子会社化を発表(公開買付手続は11月に完了)、同月17日には楽天もファッション領域における新構想ならびにサイトリニューアル(「Rakuten BRAND AVENUE」を「Rakuten Fashion」に)を発表、競争環境がガラッと変わったといえる。

EC強化に向けて矢継ぎ早に施策を打ったのはソフトバンクだろう。ZOZO子会社化に加えて、QRコード決済での知名度を活かした「PayPayモール」も11月に立ち上げた。「PayPay」普及の起爆剤となった最大20%還元を打ち出し、強化に余念がない。

ここで気になるのが、NTTドコモとKDDIの今後の施策だ。

KDDIは、昨年11月に楽天と決済・物流・通信分野での相互補完に踏み出したが、EC分野での関係強化にまで踏み切ることになるのだろうか。

NTTドコモは、11月末に新料金プラン利用者に対して「Amazonプライム」を1年間無料で提供するキャンペーンを開始すると発表した。「Amazonプライム」の利用料を無料とするキャンペーン自体は、既に一部の電力会社やガス会社も取り入れており新鮮味に欠けるものだが、両社の連携深化に向けた第一歩だとすれば大ニュースである。「Amazonアプリ」のプリインストール、「d払い」対応など、両社の関係はもともと良好である。さらに、サブブランドをもたないNTTドコモにとって、アマゾンジャパンはMVNOのSIMパッケージにおける主要販路という側面も有する。今後両社の間合いがどのように変化するのかも注目点だ。

今回、駆け足でEC分野での状況を整理したが、金融(銀行・クレジットカード)をはじめさまざまな分野で4グループは競争関係にある。独自展開、パートナーとの連携など様々な手法で各社どのように競争力を強化していくか、来年以降の動きにも注目していきたい。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて12月16日に公開された記事となります。
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