3月に発刊した、国内・海外の5G市場動向を分析した調査資料「第5世代移動通信 技術・設備投資動向・関連産業サービス開発動向 2020年版」。同資料をもとに5Gの現況を取り上げる短期連載の2回目は、国内における5G基地局投資予測に焦点を当てる。
楽天モバイルを除く通信3社の5G基地局投資金額予測を合算して5G基地局投資の状況をみると、年を追うごとに投資額は増加し、2023年度には1000億円の大台を突破するまで拡大すると見込まれる。
割り当てられた周波数帯や展開計画など各社の状況はまちまちである。今回の予測における背景を各社ごとに整理したい。
まずNTTドコモは、4.5GHz帯の周波数を唯一獲得したキャリアである。4.5GHz帯は衛星周波数との干渉も問題なく、非常に展開しやすい。またローカル5Gの周波数とも隣接している。NEC、富士通はローカル5G周波数にも対応した基地局をNTTドコモに提供している。
KDDIは、3.7GHz帯と28GHz帯だが、3.7GHz帯は衛星周波数との干渉があり、都市部での展開が難しい。そのため干渉を避けるために出力の低いスモールセル基地局を多数展開することにより、エリアをカバーする予定である。このような背景から、投資額も他キャリアと比較し高いと想定される。
ソフトバンクも、KDDI同様3.7GHz帯と28GHz帯だが、他キャリアと比較し投資額は低めになると予測した。これは、ソフトバンクの5GサービスはIoTをキーテクノロジーとして考えており、自動運転などの低遅延の特性を最優先に実現したいため、大容量に関わる初期の5G基地局展開を抑えていると想定されるためである。また、既存LTE周波数の5G化を積極的に捉えている点も考慮した。
なお、投資額の予測にあたっては、3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯を対象としている。各キャリアとも総務省に提出した開設計画よりも基地局展開を前倒しすると明言しており、その状況を踏まえて算出を行った。
また、日本国内で当初展開される5Gでは、Option3xのNWアーキテクチャが採用されるため、既存のLTEバンドをアンカーバンドとしたNW構成を取り、その展開エリアも既存のLTEエリアと同様になる。そのため、都市部はLTE網が十分に整備されており、併設での5G展開が妥当であり、都市部は新設なしと仮定した。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて4月20日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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