3月に発刊した、国内・海外の5G市場動向を分析した調査資料「第5世代移動通信 技術・設備投資動向・関連産業サービス開発動向 2020年版」。同資料をもとに5Gの現況を取り上げる短期連載の3回目は、端末ベンダ・チップベンダの状況を俯瞰したい。
通信規格の世代交代にともない、業界を構成するプレーヤーの力関係が変化してきている。
3Gの後期に登場したスマートフォンは、爆発的な普及を遂げ、Apple、Samsungなど数社で世界シェアの半分以上を握る構図が出現した。通信事業者は、加入者シェアを獲得するために、人気端末の販売が重要ポイントとなり、端末ベンダの力が強くなる。
またこの頃から、ネットワークで使用される周波数の帯域が激増し、人気端末がどの周波数に対応するのかが注目される。チップベンダは端末ベンダの意向に沿って開発を行い、通信事業者は人気端末がサポートする周波数帯域のエリア拡充をおこなった。
4Gで国際標準が一本にまとまったことにより、端末、インフラ、チップ分野では、巨大なベンダがさらに巨大になる構図が定着した。特に標準化をサポートしたチップを開発し大量供給することができるチップベンダが限られたことで、特定の巨大チップベンダのチップ開発が完了しなければネットワークで新技術を利用できないという状態が発生する。技術を先行して導入したい日米韓中の通信事業者や、そこへ製品を提供するモバイルベンダは、チップベンダの開発完了時期から開発線表を弾くことになる。
5Gに向けて、自社でチップ開発を行うことができるSamsungやHuaweiは、自社グループ内で標準化に対応したチップ開発を行い、自社製品に採用している。Qualcommなどの特定チップベンダの開発スケジュールにより、端末やインフラ製品のスケジュールが左右されないように対策している。
今後、5Gが本格化する中で、IoTや自動運転などモジュール化などが進み、大量のデバイスがネットワークに接続するような利用方法が定着すると、チップベンダの重要度がさらに増すことになると考えられる。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて4月30日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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