3月に発刊した、国内・海外の5G市場動向を分析した調査資料「第5世代移動通信 技術・設備投資動向・関連産業サービス開発動向 2020年版」。同資料をもとに5Gの現況を取り上げる短期連載の最終回は、5G時代の関連産業サービスの有力候補である自動運転について取り上げる。
自動車業界はその他の業界に比べて特異な業界構造を持っている。自動車産業は広範囲な関連産業であり、自動車及び自動車部品の開発・製造を支えるOEM(カーメーカ)やサプライヤ、販売・サポートを支えるディーラー、交通・給油インフラを支えるインフラ事業者等の多くの企業が関わる総合産業といえる。
近年では自動車業界に大きなインパクトを与えるトレンドとして、「CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)」が話題となっており、通信業界の「5G」と同様に、産業構造に大きな変革を与える可能性がある。
また、IT業界のデジタルプラットフォーマは、サービス利用者から収集される"ビッグデータ"を活用したモビリティサービス(MaaS: Mobility as a Service)という切り口で自動車業界へ参入を開始している。テレコム系の事業者は、5Gの特徴である高速大容量・低遅延・高信頼性の"コネクティッド" を軸に、自動車業界との協調の動きを図っている。
自動車・テレコム・IT業界では、自動運転技術に対してそれぞれ異なった見方を示している。自動車業界では、自動車そのものの開発・製造に取り組んでおり、これまで自動車業界が得意としたすり合わせ技術をベースに、"自律走行型の自動運転"を目指している。
一方でテレコム業界では、5Gのキラーアプリケーションとして"遠隔型の自動運転"の実現を目指し、実証実験に取り組んでいるが、自動車の車両制御観点では、μsecオーダ(100万分の1秒)という5Gで実現可能とされる超低遅延(< 1ms)に比べ、さらに高レベルな遅延要求が必要とされており、ネットワークを主とした自動運転技術の確立や本格的な車両制御としての活用は難しいと見られている。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて5月15日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |
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