通信キャリア各社の決算数値から、各社の状況を比較する本企画。これまでは通信事業に関する状況整理を主軸としてきたが、各社ともに非通信領域へのシフトを鮮明にしており、今回から新領域の状況も確認していきたい。今回取り上げるのは「クレジットカード取扱高」だ。
非通信領域で各社が力を入れる分野の代表格が「金融・決済事業」だろう。今回取り上げるクレジットカードはもとより、QRコード決済、ポイントプログラム、銀行、証券、保険など、さまざまな領域を取り込み、通信事業で抱える数千万単位の顧客を軸に利用を促している。
携帯事業を手掛ける4グループのクレジットカード取扱高を整理したのが以下のグラフだ。この分野では、楽天が他グループを大きく引き離すポジションにあることが見て取れる。
2020年4~6月期の取扱高は2兆5965億円で、NTTドコモ(1兆1400億円)やZホールディングス(5563億円)とは倍以上の差がついている。なお、KDDIは1兆8870億円と肉薄しているように見えるが、この数字はau WALLET プリペイドカードやauかんたん決済などクレジットカード以外の取扱高が含まれるため、単純比較できないものである。
楽天の場合、楽天市場での決済における楽天カードの比率がコンスタントに6割程度(4~6月期は63.4%)をキープしている。ECの伸長にともない、クレジット取扱高も伸びる構図となっている。通信各社が、スマホ契約者に対してポイントプログラムやECと絡めたクレジットカード特典を強化しているのもこのためだ。
7月末、Zホールディングスは金融・決済事業のブランドを「PayPay」に統一すると発表し、クレジットカードのブランドは「Yahoo!カード」から「PayPayカード」に変更される予定だ。QRコード決済における認知度を活かし、通信グループ内で見劣りする流通総額のテコ入れをはかる狙いがあると見られる。
現状のカード取扱高は楽天が優位であるものの、グラフのとおり、2四半期連続で取扱高が減少している。4~6月期はコロナ禍で実店舗での決済が減ったこともあり、4グループ全てが減少に見舞われているとはいえ、競争激化でこれまでの拡大基調に異変が起きている可能性もあろう。今後も定点観測を続けていきたい。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて8月27日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |