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5Gエリア戦略の違いに見る携帯各社の事情

NTTドコモとKDDI、SB(ソフトバンク)の5Gエリア展開に関する議論がヒートアップしている。KDDIとSBがエリア展開で4G周波数の5G転用によって一気にエリア整備を進める姿勢を見せれば、NTTドコモはそれでは4Gと同等の5Gサービスしか提供できず、「優良誤認」にあたると指摘する。

今回は、異なる携帯各社の5Gエリア戦略の事情について取り上げてみたい。

NTTドコモとKDDI、SBの5Gエリア計画

NTTドコモのエリア戦略では4G周波数の5G転用を否定しているわけではないが、5G用に新規で割り当てられたSub-6の3.7GHz帯や4.5GHz帯、ミリ波として28GHz帯を優先的に整備し、2021年末までに2万局を整備する。

これに対してKDDIとSBは、早ければ2020年末から4G周波数を順次5G化していくことで2021年度末にはそれぞれ5G基地局を5万局にまで一気に増加する計画だ。

「5G向け新周波数」と「無線機ベンダー」の違いが大きな理由

これまでも3G、4Gと新たな世代の交代時に、技術面から戦略を組み立てるNTTドコモと、マーケティング的な観点から展開するKDDIとSBでは、そもそもの哲学が違うという見解も聞かれる。

しかし、そういうマクロ的な観点よりも、今回で言えばNTTドコモとKDDI、SBに割当られている『5G向け周波数帯』と、各社が採用している『基地局向け無線機ベンダ』の違いにこそ目を向けるべきではないだろうか。

5G向け周波数帯では、NTTドコモは3.7GHz帯や4.5GHz帯、28GHz帯の3つが割り当てられているのに対し、KDDIとSBには3.7GHz帯と28GHz帯の2つしかない。現状、衛星との干渉問題がある3.7GHz帯と高周波の28GHz帯はエリア展開が非常に難しいという事情を抱えているのに対し、NTTドコモは独自に持つ4.5GHz帯でエリア整備が進めることができるというアドバンテージがある。実際、通建工事関係者によれば、NTTドコモでは4.5GHz帯が先行する形でエリア整備が進んでいるという。

余談だが、総務省が携帯各社へ5G向け周波数を割り合えた際、その結果にドコモ関係者は思わずガッツポーズしたという話も聞かれた。

図:携帯各社の5G向け周波数帯出典:総務省

2つ目の無線機ベンダーでいえば、NTTドコモは自らが主導して開発するため、国内ベンダーが主力なのに対し、KDDIとSBはEricssonやNokiaなどグローバルベンダーから標準品を調達している。

図:携帯各社の無線機ベンダーの採用状況出典:MCA「第5世代移動通信 技術・設備投資動向・関連産業サービス開発動向 2020年版

今回の4G周波数の5G転用で言えば、4Gと5Gの電波を4G用周波数で同時に混在できるようにするため「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」と呼ぶ技術の採用が必要となるが、これはEricssonとQualcommが開発を進めてきた経緯がある。つまり、ここ4~5年で導入されたEricssonとNokiaの製品であれば対応可能という事になるのに対し、NTTドコモは対応が難しいという事情がある。

ソフト更新するだけで4G基地局を5G化できるだけにDSSを使えば、先に述べている通りエリア展開が圧倒的に有利となる。しかし、NTTドコモが指摘するように、それで5Gのパフォーマンスを発揮できるのかと言われると疑問符がつかざるを得ない。

歴史は繰り返される

今回のニュースに際し、2002年頃にPDC(2G)からW-CDMA(3G)という互換性のない世代交代を行ったNTTドコモとボーダフィン(現SB)が立ち上げに苦戦したのに対し、cdmaOneの上位互換であるCDMA2000へのスイッチをスムーズに行ったKDDIが「レボリューションではなくエボリューションこそが重要なのだ」と語り、その後のシェア拡大につなげたことが思い出される。

また、4GであるLTEも当初は3Gが全国をカバーするのでLTEはスポット展開になるとされてきたが、実際は各社のエリア展開競争が白熱した結果、今や全国津々浦々までLTEが張り巡らされている。

5Gでも携帯各社のエリア計画は相次いで前倒しとなっており、2021年からは、ピュアな5Gと呼ばれるSA(Stand Alone)が開始する見込みだ。改めて、顧客視点から5G表記について検討するタイミングなのかも知れない。

本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて9月17日に公開された記事となります。
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