iPhoneが5Gに対応し、いよいよ4Gから5Gへの切り替えが期待されている。今回は、携帯各社の5G端末から見える現状について取り上げたい。
5Gは、まず2019年4月に米国と韓国で商用化された。日本では2020年3月にNTTドコモとKDDI、ソフトバンクがそれぞれサービスを開始し、当初6月を予定していた楽天は9月からとなった。
5G商用化に合わせNTTドコモは、2020年3月に開催した「5G・新サービス・新商品発表会」で5Gに対応したスマートフォン7機種「Galaxy S20 5G SC-51A」「Galaxy S20+ 5G SC-52A」「Galaxy S20+ Olympic Games Edition」「Xperia 1 II SO-51A」「AQUOS R5G SH-51A」「LG V60 ThinQ 5G L-51A」「arrows 5G F-51A」を発表した。このうち「Galaxy S20+ Olympic Games Edition」についてはオリンピックの大会延期の影響で発売中止となっている。
携帯会社の中で最も5G端末のラインナップ強化を図っているKDDIは、2020年3月に開催した「UNLIMITED WORLD au 5G」において、スマートフォン7機種「Xperia 1 II SOG01」「Galaxy S20 5G SCG01」「Galaxy S20+ 5G SCG02」「AQUOS R5G SHG01」「OPPO Find X2 Pro OPG01」「Mi 10 Lite 5G XIG01」「ZTE a1 ZTG01」を発表した。このうちOPPO Find X2 ProとZTE a1はKDDI独占、また国内キャリアとして初めてシャオミ製スマートフォンを採用したことでも話題となった。その後、9月に「Xperia 5 II」「Galaxy Note20 Ultra 5G」「Galaxy Z Fold2 5G」「Galaxy Z Flip 5G」「Galaxy A51 5G」「AQUOS sense5G」の6機種を新たに発表している。
ソフトバンクは2020年3月に5G対応のスマートフォンとして「AQUOS R5G」「ZTE Axon 10 Pro 5G」「LG V60 ThinQ 5G」「OPPO Reno3 5G」の4機種を発表し、このうち「Reno3 5G」はソフトバンク限定だった。その後、秋モデルとして10月に「Google Pixel 4a(5G)」「Google Pixel 5」「AQUOS zero5G basic」「Xperia 5 II」の4機種を発表、このうち「Google Pixel 4a(5G)」は独占モデルとなっている。
以上のAndroid端末に加え、3社はいずれもアップルの「iPhone 12 Pro」「iPhone 12」も発売済みだ。
一方、iPhoneが起爆剤になるのではと噂されてきた楽天だったが、現時点の取り扱いはない。5G端末として用意しているのは、ミリ波/Sub-6に対応したオリジナルスマートフォンの「Rakuten BIG」と、6月から販売しているシャープ製「AQUOS R5G」だ。「AQUOS R5G」は5G商用化に合わせアップデートで5Gに対応した。
今回、5G対応のiPhoneの登場で携帯各社は5G端末へギアチェンジすることになるが、NTTドコモは2020年度末(2021年3月)の5Gスマホ契約者が250万、KDDIは200万を掲げている。しかし、いずれも契約者全体に占める割合はそれぞれ数%というレベルでしかない。
5Gネットワークの狭さに加え、3Gや4Gの時のように対応端末の普及を牽引する個人向けサービスが乏しいことが要因だが、今後の5G普及の壁となりそうなのが『5G端末価格の高さ』と『端末と通信料金の分離』ではないだろうか。
携帯各社は今年秋からの新端末は5G端末になると宣言している。その意味では消費者は端末買い換えの際に5G端末しか選択肢がなくなることから、一定の5G化率は進んでいくだろう。しかし、現在のような2万円までという割引制度が緩和されない限りは、4年平均とされる端末買い換え期間の短縮化は望めない。
また、携帯会社による通信サービスと端末の一体提供ができなくなった「端末と通信料金の分離」化が端末買い換え鈍化に拍車をかけていく可能性もある。その結果、十分な5G基盤が整備されないことで、その上で提供されるサービスの普及にも影響を及ぼすかも知れない。
日本の5Gは中国や韓国、そして米国など先頭グループと比較すると周回遅れと言われている。既に中国では5G基地局が約70万局、5G契約者は1億人前後まで増加している。
ある端末ベンダーによれば、5G向け半導体の供給で最大手のクアルコムは、最大顧客であるアップルや取引停止までに在庫を積み増しておきたいファーウェイ、そして需要旺盛な中国端末ベンダーなどの増産要請が大きく、発注量が少ない日本ベンダーが今後割当を受けにくくなる可能性があると指摘する。
5G対応のiPhone登場を契機に、5Gについて更なる周回遅れにならないよう日本の立ち位置について再認識すべきタイミングなのではないだろうか。
本記事は、株式会社インプレス「ケータイWatch」内で弊社が執筆を担当している連載「DATAで見るケータイ業界」にて10月30日に公開された記事となります。 最新記事や過去の掲載分は「DATAで見るケータイ業界」もあわせてご覧下さい。 |