「SIMフリースマホに潜む落とし穴」や「iPhoneとVoLTEと中継電話の関係」などを解説(2)
法制度上、技適認証を受ければIOTの必要はないが...
最後に登壇した大内氏の登壇テーマは「MVNOとSIMフリー端末について」。SIMフリー端末の普及にあわせて接続に関するトラブルも増加傾向にあり、その背景と主な事例の説明が行われた。
接続の不具合が起きる背景として大内氏が挙げたのが「技適」と「相互接続テスト(IOT)」の関係だ。
本来、携帯電話端末をキャリア(事業者)に接続する際には「事業者の接続検査を受けることが必要」と電気通信事業法で定められている。NTTドコモ向けの端末であればNTTドコモの接続検査に合格する必要がある、ということだ。
ただしこれでは、複数の事業者と接続しようとすればそれだけ接続検査が増えてしまい利便性に欠けるということで、登録認定機関で「技適」認定を受けた端末であれば事業者の接続検査が不要となる特例が設けられている。
これにより、SIMフリー端末でも「技適」認定を受ければキャリアの接続検査なしに利用できるようになっている。
技適端末でもキャリア設備との『相性』が悪く通信が不安定化することも
ところが、大内氏によれば「キャリアが利用している様々な機器との相性、接続時のパラメータや接続手順等の問題から、技適認定端末でも接続が不安定になることがある。キャリアとの接続検査を受け、端末をチューニングすることが望ましい」という。
実際、NTTドコモでは「相互接続ガイドブック」の中で「事前に当社ネットワークと正常な接続確認を行うことをおすすめします」と記載するなど、キャリア側では事前のIOTを推奨している。
また、IIJも同様のスタンスを取っている。講演の最後で、SIMフリー端末メーカーに対してIOTを実施するか、それが難しい場合は「IIJに持ち込んでもらい、共同でテストを実施する機会をいただきたい」と、検査を広く呼びかけたほどだ。
なぜIIJが端末メーカーに検査を呼びかけたのだろうか。そこには、端末に起因する問題はMVNO側で原因を突き止めにくい事情がある。
キャリアと端末の相性でつながりにくい状況が発生した場合を仮定すると、それは「端末」と「基地局(キャリア側設備)」とのあいだのトラブルとなり、両者がどのようなやりとり(制御情報)を行っているかMVNO側はほとんど分からないのだ。そのため、原因がどこにあるのか、切り分けが難しい状況となっている。
今回大内氏は、端末と基地局のあいだの無線区間でやりとりされる制御情報を端末のチップから取得し、その解析をもとに原因追究を行った事例を取り上げた。
会場では複数の事例が紹介されたが、ここでは、従来は端末初期設定時にのみ行われていたAPNサーチが、Lollipop(Android5.0)では頻繁に行われるようになり、LTEでの接続ができず3G接続に限定される『APNサーチ問題』を一例として取り上げる。
Nexus5では、まずデフォルトでmopera.netへのAPN接続が試みられてしまい、接続エラーが生じてしまう。すると3Gフォールバック時に端末側が「3G(UTRAN)の能力しかない」との情報を基地局に通知してしまうという。そのためLTE接続ができなくなってしまうのだ。
大内氏の説明終了後、IIJがこのような非常に手間のかかる検証を行う背景を堂前氏が補足した。以下に堂前氏の発言(要約)を掲載する。
とはいえ利用者からすれば「なぜかつながらない」状況はキャリアだろうとMVNOだろうと違いはなく、誰かが交通整理をしなければならないと考えている。解決するにはしかるべきところに対策を取ってもらう必要があるが、そのためには原因と所在の裏付けをとらないとお願いもできない。
検証できる体制がなければ、利用者からの問い合わせにも「分かりません」としか回答できないため、我々としてはできることは確実に手を打っていきたい。今後、SIMロックフリー義務化も追い風となってSIMフリー端末が増加することは確実で、今から力をつけていきたいと思う。
[04/27 3:40] 内容の一部を修正しました。
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