「SIMフリースマホに潜む落とし穴」や「iPhoneとVoLTEと中継電話の関係」などを解説(3)
「SIMロック解除義務化をどう見る?」「KDDI網を使ったMVNOを個人向けに提供する予定は?」など参加者からの質問に登壇者が回答
質疑応答の模様
なおトークセッションの合間に行われた質疑応答についてもあわせて取り上げている。
[04/27 3:35] 質疑応答を追記するとともに、質問内容をテーマごとに区分けしました。
IIJmioのサービス内容に関する質疑応答
――(現在VoLTEは同一キャリア内の対応端末同士に限られているが)今後他キャリア間でもVoLTEができるようになれば「みおふぉん」でも他キャリアへVoLTEで通話ができるようになるか。
宮本氏:
可能となる。ただし、いつから他キャリア間でVoLTEが可能になるかはキャリア間での調整の問題であり、IIJとしては把握していない。
――「みおふぉん」で他のMVNOと音声通話を行った場合、VoLTE通話は可能なのか。
宮本氏:
NTTドコモ網を借りたMVNOであれば、VoLTE通話は可能。MVNOは、IIJからみたらNTTドコモにみえるので、NTTドコモと同様VoLTEで通話できる。
――『APNサーチ問題』は、端末の初期設定時にAPN設定をしっかり行っていても発生する問題なのか。
大内氏:
最初の設定をしっかり行い問題なく接続できたとしても、なんらかの契機で初期の状態にもどってしまい、再度設定しはじめてしまう。Android OSのバージョンが4から5にアップされる際、APNまわりのコードに変更が加えられており、その影響ではないかとみている。
――今回、Nexus端末による検証結果が発表されたが、iPhoneやiPadでも調査は行えるのか。
堂前氏:
調査は可能だが、やはりブラックボックスの部分が多く、技術的なハードルは高いのが正直なところだ。
――特定の時間や場所でつながりにくい状況が発生しているのだが、これはIIJ側の問題なのか、それともMNO(NTTドコモ)側の問題なのか。また、どちらの問題かを、スピードテストの結果を見て利用者が把握することはできるか。
堂前氏:
おおまかに説明すると、特定のエリアだけつながりにくい、という場合は基地局側、すなわちMNO側の問題であることが多い。例えば新宿駅ではつながりにくいけど、少し離れた場所なら使える、というような場合がこれに該当する。エリアに起因する場合、問い合わせがあればNTTドコモに対して調査依頼を行っているが、依頼に対するNTTドコモからの回答をフィードバックするところまでは行っていない。
一方、IIJ側の問題の場合、日本全国のどこでも一斉に遅くなってしまう。
スピードテストで得られる結果、上り・下り速度やping値などで問題の切り分けを行うのは難しい。
――業績下方修正を発表したが、その影響で設備投資を渋っていないか。
佐々木氏:
まず、下方修正で関係各位にご心配をおかけしたことをお詫びいたします。NTTドコモから接続料の通知を受けるのが3月で、その接続料は前年4月からさかのぼって適用される仕組みになっている。つまり、現時点(4月)の段階では、来年3月に通知を受ける接続料がどうなるのかを予想して会社としての計画や予算を作る必要がある。とはいえ、来年の数値を正確に予想することなど不可能で、今回の発表は前年の予想がはずれた(予想よりも接続料が高かった)ことが原因。
我々も民間企業であり、絶えずコスト削減は求められているが、「品質を下げてでもコスト削減をしろ」とは言われていない。
このような質問が投げかけられたのは、現状ランチタイム(12~13時)のほか、朝8~9時、平日18~23時にも一部で品質低下が生じていることに対するお叱りも込められていると思うが、既に設備増強の前倒しと大規模帯域拡大を予定しており、今後も品質を維持すべく設備投資を行っていく。
逆に、今挙げた時間帯以外でつながりにくい状況が発生するとすれば別の原因も考えられるのでツイッター等で教えて欲しい。
――訪日外国人向けのSIM購入における本人認証手続きはどうなっているのか。
佐々木氏:
現状は販売する店舗によって手続きが異なっており、パスポート提示が必要なところとそうでないところがある。これは、明確な規定がないためである。現状があやふやである点は我々も認識しており、MVNO委員会の中でデータ通信専用SIMについてのガイドラインを策定すべく、今年3月には中間報告をとりまとめた。
IIJとしては、最終報告が固まった段階で、その規定に準拠した手続きを実装しようと考えている。
――SIMカードのICC IDがパッケージ外装から見えるようにして欲しい。SIMによっては引っかかったりするので、買うときに選びたい。
堂前氏:
ご意見は承った。ただ、パッケージを変えればOKという話ではなく、店舗での対応を含めた全体的なオペレーション見直しが必要である。
――クーポンが増量され、余ることもある。例えばクーポンを3倍消費するかわりに逼迫時でも高速通信ができる仕組みを導入してはどうか。
佐々木氏:
本来ならクーポンを普通に使えば高速通信できなければならないのに、それができていないことに対するお叱りも含まれていると思われ、申し訳なく思っている。クーポンを普通に使えば高速通信ができる、平時の状態に戻すことに取り組みたい。いただいた提案は、技術的にもおもしろく、ロマンがあるなと思う反面、もし導入したら一般の消費者からツイッターで問い合わせが殺到してしまうのではないか、というのも一瞬頭をよぎってしまった。
――契約を解約した場合、SIMカードは返却しなければならないのか。
堂前氏:
IIJmioのSIMカードはMNOであるNTTドコモから借りたものを、利用者に貸し出している。借りたものは返す、というのが大原則ですので、返していただきたいと思っています。ただし、返却しないことで違約金等を請求することはありません。
――Twitter上でのやりとり(質問と回答など)はどこかにまとめられていますか。
堂前氏:
Twitterだけをまとめたものはありません。ただし、FAQのコーナーではTwitterやサポートセンターに寄せられる質問を随時フィードバックしています。Twitterまとめサイトを作っていただくのは大歓迎です。
――今日の講演でSIMフリー端末に落とし穴があることが分かったが、「ZenFone 2」のようにIIJがセット販売している端末であれば問題ないのか。
堂前氏:
まず「ZenFone 2」は、セット販売というより、ASUSのオンラインショップで購入していただくとIIJmio音声通話パックがプレゼントされる、というキャンペーン展開です。しっかり組んでいるところについてはひととおりの動作検証はしていますが、大内が本日発表したような深いところまでの検証は行っていない。あの検査は、障害が発生したことで深く調査した経緯がある。
ただ、しっかり組んでいるところであれば、メーカーとのコンタクトができるいるので、なにかあれば先方に話が通しやすいのではないか。
――カタログスペックで「下り最大225Mbps」と表記しているが、理論値の表記に意味があるのか。また、相互接続帯域がカタログスペックより小さいということはないのか。
佐々木氏:
現在総務省でもスペック表記を実効速度にする方向で研究しており、基準ができればそれに従って広告を書き換えることになる。現状はベストエフォートでサービス提供をしており、理論上の速度はNTTドコモの数字を転記している。
相互接続の帯域は非開示だが、現状の帯域幅はIIJmioのカタログスペックよりも大きい。
――IIJmioにターゲット層のようなものはあるのか。
佐々木氏:
玄人にしか分からないサービスにはしたくないと考えている。イベントに参加いただいている方はデジタル機器にかなり精通されていると思うが、それほど知識がない方々もターゲットだ。ただ、例えばお子様だったり、従来型携帯電話の利用者だったり、といった方々は明確には描ききれていない。
今後の新サービスに関する質疑応答
――いま、何か胸躍る新サービスを仕込んでいますか。
佐々木氏:
新サービスはわくわく感というか、サプライズがあった方がいいと思いますので、それまでお楽しみにということで。すぐに出来るものから提供しつつ、足が長い、時間がかかるものもやっていきたいと考えています。
――Googleが発表したMVNO「Project Fi」をどう見ているか。
堂前氏:
Wi-Fiと複数キャリア(SprintとT-Mobile USA)がシームレスに使えるというが、どのレイヤーでシームレスなのかが気になっている。Googleはオーバーレイでネットワークを作る技術をもっているが、それをつかっているのかどうか。VPNなど、上のレイヤーで実現しているとすると、すごいなぁと思う。
宮本氏:
Android 5.1ではGoogle VPN機能の仕込みが行われたと聞いているが、OSというプラットフォームを持ち、コントロールができるGoogleがうらやましい。
――別のMVNOサービスで、MNP転出時のみ違約金を課すプランが出てきたが、IIJとして追随する予定は。
佐々木氏:
結論から言うと、今のところ追随する予定はない。IIJmioではMNP転出の場合「音声通話機能解除調定金」を設定しているが、設定に向けた社内議論では、当然違約金のようなものはない方がいいものの、キャリアのキャッシュバック施策との兼ね合いで、違約金を設定しないと我々の業務に支障がでる恐れがあると判断した。
議論の過程で、MNPではなく単純な解約に関しても調定金を徴収するのはいかがなものかとの話が出たのは事実。ただし、簡単に乗り換えできるようにしたMNP制度の趣旨を鑑み、MNPだけを不当に扱うプランを導入するのはよくないと判断し、解約時は一律で調定金を徴収することとした。
なお、音声通話機能のないデータSIMについては、調定金は徴収していないことを付け加えたい。
――無制限使い放題のMVNOプランをどう見ているか。IIJで提供する予定は。
堂前氏:
他社のプランをどうこういう立場にはないが、無制限使い放題プランは無制限というよりは『コントロールしていない』という認識で見ている。我々はクーポンの有無で高速通信をコントロールしているが、そうではなくネットワークをありのままの状態で提供している、別の言い方をすればネットワークリソースを利用者のみなさんで奪い合っているサービスだと思う。
考え方の違いであり、コントロールした方がいいとか、しないほうがいいとか言える話ではない。
佐々木氏:
他社が提供しているからというマーケティング的な側面だけで、他社のプランを持ってくることは考えていない。我々として、お客さまにバリューが提供できることがあれば、サービス化もあり得ると思う。
――NTTドコモのiPhoneを独自に入手して販売するMVNOもあるようだが、IIJでそのような取り組みをする可能性はあるか。
堂前氏:
IIJはアップルの一次代理店となっていて、法人向けに正規にアップル製品を提供している。公式ルートに乗っている製品は胸をはって提供するが、そうではない非公式な製品は提供すべきでないと思う。
――マツコ・デラックスさんなどタレントを起用した宣伝を行うMVNOもあるが、IIJmioではそのようなことはしないのか。
堂前氏:
広告宣伝の予算はあまりもっていないので、今のところ予定はない。
KDDI網を使ったMVNOに関する質疑応答
――NTTドコモ網を使ったSIMと、KDDI網を使ったSIMを提供されているが、Googleの「Project Fi」のように両者でシームレスに通信できる可能性は。
佐々木氏:
そういったサービスを検討したかどうかでいえば「したことはある」となるが、技術面に加え、法整備、キャリアとの関係など、ハードルが高いのも事実である。残念ながら、やりたいからできる、といったシンプルなものではない。
堂前氏:
Google「Project Fi」が複数キャリアを束ねたのは、国土が広いアメリカではキャリアによってエリアカバーが違うから、束ねることでエリアを広げることを目指したのではないかと見ている。一方日本のキャリアはエリアカバー率でそんなに違いはなく、束ねることでメリットが出るのか、という思いもある。
IIJが複数キャリアのMVNOを持っているからといって、すぐGoogleのようなことをするとは限らないのではないか。
――KDDI網のMVNOは法人向けとなっているが、コンシューマ向けには提供されないのか。
佐々木氏:
ユーザーにこういう使い方をして欲しい、というデザインが描けるものをサービスとして作っていきたいと考えている。その観点から、KDDI網のMVNO SIMを出すことで一般の消費者に提供できるメリット、魅力を伝えられるメッセージ、が組み立てられれば提供していきたい。
――IIJが法人向けに提供しているKDDI網のMVNOはiPhone6でも使えるのか。
宮本氏:
KDDI網を使う他のMVNOと同様、iPhone6では通信ができないことを確認している。
MVNO市場など、その他の質疑応答
――MVNO間で、今回の講演で発表された問題などを共有するしくみはあるのか。また、端末メーカーも含めた業界横断的な動きはないのか。
堂前氏:
いまのところ、共有する仕組みはない。
佐々木氏:
業界団体としてはテレコムサービス協会の中にMVNO委員会が設置されているが、これはあくまで政策的な課題の議論が中心となっている。業界活動は段階的に進むものなので、今後関心が高まればそのようなことも議論される可能性はある。ただし、端末メーカーに関しては別の課題もある。通信事業者の監督官庁は総務省だが、メーカーは経産省が管轄で、ハードルはグッと高くなってしまう。我々も経産省の方とお話をすることはあるが、パイプはそれほど太くなく、長期的な課題となる。
――IOTの費用や期間は。
佐々木氏:
IOTのボリュームに依存するので明確にお答えできない。例えば新しく開発されたチップセット、リリースされたばかりのOSの端末と、マイナーチェンジレベルの端末ではコストは全然変わってくる。ざっくり言えば、ン百万円、ン週間、というところ。
――キャリアのSIMロック解除を行うスキームが発表され、購入後半年経たないと解除できない制度になったが、どう見ているか。
佐々木氏:
IIJとしてとりたてて意見はない。基本的にキャリアの意見を尊重したいと思っている。たとえ話だが、我々がサービス展開するときに総務省にがんじがらめにされたらやはりやりにくいと思うし、キャリアも同じ思いなのではないか。
規則をつくればユーザーのメリットになるかと言えばそうではなく、規制によってみんなが横並びになるだけという負の側面もあるだろう。
SIMロック解除については、それがビジネスチャンスになればいいなと捉えている。
堂前氏:
SIMロック解除義務化については楽観視していない。売上が増えることはあるかもしれないが、それは別として、MVNOは文字通り「大変」になるのではないか。
調べなければならないこと、考えなければならないことなどがかなり増えると思っている。
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