SIMフリースマホの選び方から通信品質・MVNO施策まで幅広い内容の講演に(7)

「長期優遇策は?」「音声定額は?」「DMM mobileとの関係は?」など
会場からの質問に講演に登壇したIIJスタッフが回答

続いて、登壇したIIJスタッフが回答した質問についてまとめてみたい。

――1月13日に4時間程度サービスを停止する大規模な設備増強を行った目的は。

ユーザーが急増したことに対応した増強。既存設備のままでの追加的な増強ではキャパオーバーになる可能性があり、総取っ替えする大がかりな増強を行った。法令改正の事前準備ではない。

――昼休み時間帯の速度低下は改善できないでしょうか。

1月の設備増強で多少の改善がみられる。「昼休みは遅い」といわれないようがんばっていきたい。

――現状のIIJmioにおける3GとLTEのトラフィック比率は。

3Gについては(IIJmio全体の総トラフィックとしてではなく)お客さま1人あたりでみると減少傾向にある。LTEに対応した端末が増えていることが背景にある。

その分、LTEのトラフィックは急速に増えている。

――MVNOが海外ローミングサービスを提供することは可能か。

技術的には可能で、実際IIJでは法人向けにサービスを提供している。ただし、NTTドコモのサービスを使っているので、データ通信のようにMVNOらしい価格帯でローミング提供ができる状況にはない。メリットのあるプランはあまりだせないので、海外では現地のSIMを使った方がよいのではないか。

――Apple SIMのように容易に別のキャリアに契約変更できたり、国内で複数キャリアをまたいで利用できるSIMは提供可能か。

課題が非常に多く、現状ではとてもできないというのが正直なところ。SIMの発行や管理をアンバンドルできるかどうかが第1のハードルとなる。

――IIJmioでクーポンのオンとオフの切り替えは1分に1度しかできないが、この制限時間は短くならないか。

むやみにオンとオフを切り替えてサーバが高負荷になるのを防ぐため、現状この制限を導入している。

――IIJはMNOであるNTTドコモの設備を借りてIIJmioのサービスを提供しているが、逆にIIJの設備を借りてMVNO事業を展開することはできるのか。DMM mobileはIIJmioに似たサービスのように思えるが。

IIJはMVNE事業も行っており、こちらを利用していただければ展開は可能。NTTドコモと直接接続するよりも、展開に向けたハードルはかなり下げられる。表現はよくないが、エンジニアがいなくてもIIJにバックヤードを丸投げしてもらってMVNOを展開することもできる。

ただし、どこが弊社のMVNEを使っているかというのはこちらから積極的には開示しない。DMMさんについては、弊社サービスを使っているとインタビュー記事で答えていただいたので、それを追認します。

――MNOの障害情報はIIJにきちんと届いているのか。

MNOであるNTTドコモからは十分な情報を得ている。また、問い合わせできるエンジニア窓口も用意していただいている。

――IIJmioでは、解約の違約金が音声通話プランにのみ設定されているが、その理由は。

音声通話付きSIMはMNPに対応しなくてはならず、MNPでは乗り換え時のキャッシュバックという問題がある。いわゆる「MNP弾」として、MNPすることを主目的に利用されるのを防ぐため設けている。

――IIJmioを長く使う利用者に対して優遇をすることはないか。

(MNP弾対策としての解約違約金を除けば)いつでも契約でき、いつでも解約できる、というあっさりとしたプランが多いのがMVNOの特長だと思っている。個人的には長く使って欲しいので、何らかの形で返せるのであれば返していきたいと思う。

――DMM mobileはIIJのMVNEを利用しているという話だったが、IIJmioとDMMでサービス品質に差は出るのか。

(IIJとDMMという話ではなく)一般論として、IIJmioのサービスと、IIJのMVNEが提供するサービスとのあいだで違いが出る可能性はある。MVNE利用事業者が、我々に対し通信制御に関する依頼を行った場合、その依頼が妥当であれば我々はその指示通り制御することになる。MVNE利用事業者の方針には従うのが基本だからだ。

MVNO利用者の契約先によって状況は異なる。BIC SIM、ELSONIC SIM(ノジマ)については、それぞれの店頭で販売されているが通信契約はIIJと行うものなのでIIJmioと中身は一緒である。質問に出てきたDMM mobileについてはDMMさんが契約先になる。

――訪日外国人向けに「JAPAN TRAVEL SIM」を提供されているが、音声通話付きのものを提供する予定は。

音声SIMについては、国内の法律によって契約時に厳格な本人確認が求められることもあり、非常に難しいのが正直なところ。サービス提供に向けて理論的な組み立てができているとはいえない。2020年に向けて、議論が幅広く進んでいけばよいと考えている。

――使ってみないと分からないところがあるので、トライアルサービスがあるとありがたい。

現在は提供していないが、今後の課題として承る。

――MVNOの中には、細い帯域の中に利用者を詰め込んで品質改善をしない事業者が出てくる可能性もあるが。

MVNOも通信事業であり、電気通信事業法では事業者としての要件が定められているので、事業法の精神にのっとって事業を行う必要があると思う。しかし、業界の中で取り締まるという話ではない。

ただ、業界の考え方と利用者の目線に齟齬が生じ、自浄能力が働かなければ外部からの規制も仕方ない。

――携帯キャリアには音声通話定額プランがあるが、IIJmioとしての対応は。

要望は寄せられているが、通話定額というのは難しい。ただし、音声通話についてもいつかの時点で何らかの発表ができるよう検討しているのでお待ちいただきたい。

IIJ主催イベント『IIJmio meeting』取材記事

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